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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(オ)978号 判決 1954年11月05日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人角田正太郎の上告理由第一点について。

所論上告人本人訊問については、原審において、上告人は適法な呼出を受けながら、昭和二六年八月一日及び同年一〇月一〇日の両度の証拠調期日に何等の理由を届出でることなく出頭しなかつたことは記録上明らかであるから、たとえ右は所論の事項に関する唯一の証拠方法であつたとしても、右本人訊問を施行することなくして、結審した原審の措置をもつて、所論のように違法とすることはできないのみならず、所論引用の大審院判例の趣旨に反するものでもない。(また、後記第二点について説示のごとく、所論約款を以て、過当な利益獲得を目的とする不法のものでないとする以上、所論の立証事項は、結局、取調の要なきに帰するものであるから、原審がこれを取調べなかつたことはこの点からいつても違法でない。)

同第二点について。

所論契約証書八条所定の約款については、被上告人の右契約上の義務不履行の場合についても、上告人は契約を解除して、融資金の弁済を免れる旨の約款が定められてあるのであつて、かかる場合所論約款をもつて一方の過当な利益獲得を目的とするものとはみとめ難いとの趣意をもつて、右契約の内容自体、公序良俗に違反するものでないとした原判決は正当であつて、論旨引用の判例はこの場合に適切でない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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